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日経高配当株50、利回り3%台の要因は? 値動きにも表れるバリュー株特性

 株式投資家のあいだで高配当株投資への関心が高まっている。日本銀行のマイナス金利政策を背景に超低金利が続くなか、銀行預金や国債などと比べて高い利回りが期待できるためだ。日本企業が株主還元を積極化する動きも投資家の高配当志向を後押ししている。日本経済新聞社の調べによると、上場企業が株主に支払う2017年度の配当総額は5年連続で過去最高を更新する見通しだ。

 ここにきて注目の集まる高配当株への投資戦略を実現したのが「日経平均高配当株50指数」。日経平均株価の構成銘柄のうち配当利回り(指数用語解説)の高い50銘柄で算出する株価指数として日本経済新聞社が2017年1月から公表を始めた。各構成銘柄の予想配当利回り(一株配当÷株価、配当は日経予想)に市場流動性を加味したウエートで計算している。①日経平均構成銘柄から選定し、②予想配当利回りを銘柄選定とウエートに用いる――これが他社の高配当株指数にない特徴である。

 高配当株指数で投資家が気になるのが配当利回りの高さ。まず、日経高配当株50の「実現配当利回り」を見てみよう。指数構成銘柄を一定期間保有した場合、実際に受け取れる配当をもとに算定した利回りである。16年6月末から直近の銘柄定期入れ替えのあった17年6月末まで指数構成銘柄を1年間保有した場合の「実現配当利回り」は4.4%。同期間に日経平均構成銘柄を保有した利回り(概算値)を大幅に上回っている。個別銘柄でみると、キヤノンや日産自動車など実現配当利回りが5%を上回る銘柄もあった。同期間の指数値の上昇率は40%と日経平均を10ポイント上回ったのも目を引く。

表1:実現配当利回りと指数値の上昇
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表2:指数構成比の高い各銘柄の実現配当利回り
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 この実現配当利回りは、Brexit(英国の欧州連合離脱)ショックを受けて下げた16年6月末の一時点の株価で実現配当を割って計算しており、やや高めに出ている面もあるので、さらに、足元の利回り水準を時系列に比較してみよう。直近3カ月の指数構成銘柄の予想一株配当、株価、指数算出用株式数から集計した指数ベースの予想配当利回りは3.3%から3.4%で推移し、日経平均株価や東証第1部の利回りと比べて安定的に高くなっている。

表3:予想配当利回りの比較
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 配当利回りは配当を株価で割って計算するので、配当(分子)と株価(分母)の両方が利回りの高低に影響する。日経高配当株50構成銘柄の一株配当と一株利益(いずれも予想ベース)、指数算出用株式数から集計した指数ベースの配当性向(配当÷利益)は7月末時点で37%。東証第1部全体の32%を上回った。利益をより手厚く配当に回そうとする株主還元に積極的な銘柄から構成されていることが指数の配当利回りを高める一因とも言えそうだ。

 一方で株価を使った投資指標でも比較してみよう。日経高配当株50の指数ベースのPBR(株価純資産倍率)(指数用語解説)は7月末時点で1.0倍と、東証1部上場銘柄全体の1.3倍を下回った。株価水準に注目すれば、構成銘柄の持つ割安株(バリュー株)の側面も、指数の配当利回りをより押し上げている可能性もある。

 株主還元に積極的で配当を手厚く配分、株価が相対的に割安――分子、分母の両面からの影響が、3%台を安定的に上回る日経高配当株50の配当利回りにつながっているといえそうだ。

 ここ数年、国内株を対象にした他の高配当株指数が相次いで登場しているが、値動きにどのような違いはあるのか。昨年6月末以降の値動きを比較すると、日経高配当株50のパフォーマンスは、他のすべての高配当株指数を上回っているのがわかる。期間の動きをより詳細に見ていくと、昨年11月ごろからの日経高配当株50の上昇の大きさが結果として、パフォーマンスを押し上げているのがわかる。市場関係者の間で「バリュー株相場」とも言われた昨年秋以降の堅調さは、同指数がよりバリュー株投資の側面を持つことの証左である。

図1:各社の高配当株指数の値動き比較20170823-figure1.png

 金融緩和が縮小さらには引き締め方向に向かうとみられる欧米と異なり、わが国では超低金利の局面が当面続く見通し。配当利回りが安定的に3%台で推移する「日経高配当株50」はインカムゲインの観点から投資家の注目を継続的に集めそうだ。一方で、今後のバリュー株相場の局面では、値動きも加わって同指数への関心が一段と高まる可能性がある。

表4:各社の高配当株指数の特徴20170823-table4.png

(2017年8月23日更新)