株式投資の超キホン 日経平均を知ろう!(15)
早いもので令和元年がまもなく終わろうとしています。日本株相場にとって令和最初の年はどんな1年だったのか、日経平均株価を軸に振り返ってみましょう。
令和最初の取引は皇位継承に伴う10連休明けの5月7日でしたが、日経平均の終値は平成最後の4月26日と比べ、335円01銭安と続落でした。その後も下げ止まらず、令和入り以降に絞ると、5月14日まで6営業日下げ続ける結果となったのです。この間、日経平均は1191円50銭(5.35%)下げました。
令和入りの直前、すなわち平成31年1~4月の日経平均は堅調でした。平成最後の売買となった4月26日の終値時点では2018年末に比べ2243円96銭(11.21%)高い2万2258円73銭という水準まで上がっていました。令和入り直後の軟調ぶりには一体何があったのでしょう。
答えは米国と中国の関係改善に対する期待感が後退した点にあります。ここ1~2年、市場は米中関係の悪化で世界の景気が減速し、企業業績の悪化につながることを警戒し続けています。それは現状でも変わりません。ただ日本の10連休前までは米中が協議して事態打開に動く、ということに期待感が高まっていました。
状況を一変させたのはトランプ米大統領の突然の発表です。日本の連休中の5月5日、トランプ米大統領は突如、中国の輸入製品2000億ドル(約22兆円)分に対する関税を10%から25%に引き上げる、と明らかにしました。市場のそれまでの楽観を覆す内容でした。米国は中国通信大手、華為技術(ファーウェイ)に対し、製品供給を事実上禁じる措置にも踏み切りました。令和最初の月は警戒モード優勢となり、日経平均は5月だけで4月から1657円54銭(7.44%)安と大きく落ち込みました。月次ベースの下げ幅としては18年12月(2336円29銭安)以来の大きさでした。
6月末には大阪で米中首脳会談が開かれましたが、その後もトランプ大統領が引き続き中国への関税引き上げを示したり、米国が中国を為替操作国に指定したりするなど強硬姿勢が目立つと8月の日経平均は2万1000円割れで推移しました。令和元年の安値はこの時期で、8月26日の2万0261円04銭でした。
こうした空気が変わったのは9月からです。日経平均は9月3日から17日まで10営業日連続で上昇し、この続伸記録は歴代10位に並びました。米中が閣僚級の通商協議を再開すると伝わったほか、トランプ大統領が中国製品に対する追加関税の拡大を延期すると表明したり、協議する範囲を絞って暫定合意を目指す構えを示したりしたことが、両国関係の変化に期待感をもたらしたのです。9月だけで8月末から1051円47銭(5.07%)上昇しました。
米中が農産物や為替政策など特定分野で部分的に合意した10月は9月末比1171円20銭(5.38%)高、11月も10月末比366円87銭(1.60%)高と堅調でした。12月もこの流れを引き継ぎ、12月17日には年初来高値(2万4066円12銭)をつけています。これは平成最後の売買日から8%強高い水準になります。このままいけば9月以降、4カ月連続の上昇で、月次ベースでは18年6~9月以来の続伸記録となりそうです。
令和元年は10月に消費税率が5年半ぶりに上がり、10%になりましたが、今のところ日本株相場への影響は限られています。日本国内の動きより、市場の関心を集めるのはやはり米中関係です。いまは関係改善への期待感が強まっていますが、再び対立を深める動きになれば、世界の景気を左右するとあって警戒感が強まるでしょう。
こうした市場の空気は売買代金に表れています。米中関係の先行きが見通せないなかでは様子見気分が強まり、令和入り以降の5~11月の半年間で見た東証1部の売買代金は1日平均でかろうじて2兆円台に乗せる程度で、18年より約2割少なくなっています(立会市場ベース)。6~8月は3カ月連続で1兆円台にとどまりました。
振り返れば、平成最初の年(1989年)に消費税は導入されましたが、大納会に日経平均は終値として史上最高値の3万8915円87銭を記録しました。昭和の終値(89年1月6日の3万0209円54銭)から実に28.81%高で、上昇に勢いがあったのです。バブル景気の最中でしたし、この年、東京外国為替市場で円相場は1ドル=143円40銭(89年12月29日)と、年間を通じて20円近く円安・ドル高が進行したことも下支えしたのかもしれません。
同じ「元年」つながりで令和を振り返ると、平成の勢いに比べればおとなしく映ります。30年のうちに日本株を動かす投資主体は個人のほか外国人、事業法人など多様になりましたし、米国株式相場をはじめ海外の動きとの連動性を強めてきた影響もあるでしょう。
来たる令和2年はいよいよ東京五輪・パラリンピックが開催されます。日本株市場を読む代表的な指標として、日経平均への注目は今後も高まりそうです。
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(2019年12月27日付日経電子版掲載)