株式投資の超キホン「日経平均」を知ろう!(9)
日経平均株価は東証1部に上場する株式のうち、日本を代表する225銘柄を日本経済新聞社が選んで、算出しています。その日経平均を土台にした「仲間の指数」もいくつかあります。今回はその中から、配当に注目した指数をご紹介しましょう。
名前は「日経平均・配当指数(日経配当指数)」といいます。通常、火曜日から土曜日まで日本経済新聞朝刊のマーケット総合1面右上には前日の主な株価指数や外国為替レートなどを掲載した「市場体温計」があり、このなかで毎日掲載しています。3月28日付紙面では「日経配当指数(2018年) 428円49銭」と出ています。
上場企業の多くは決算を締め、最終的に残った純利益や過去の利益の蓄積を一部、株主に返しています。現金を支払う配当と、自社株買いの2つを「株主還元」と呼んでいますが、世界的な潮流として株主に回すお金は増える傾向にあります。こうしたトレンドを日経平均の採用銘柄でつかめるのがこの指数です。ざっくり言えば「日経平均をひとつの銘柄とみなし、1月から12月まで持ち続けたときに受け取る配当金」を表しています。
日経平均の構成銘柄数は225あります。各社の決算期はばらばらですが、四半期または半期ごとに配当を決めています。四半期配当や中間配当の数値は決算発表の翌日に日経配当指数に組み入れますが、期末の配当は事情が異なり、株主総会の決定を待って、総会開催日の翌日に積み上げます。四半期配当と中間配当は取締役会で決まりますが、期末配当は株主総会の決議事項です。「確定したら組み入れる」。これが日経配当指数のポリシーなのです。3月はちょうど12月期決算企業の株主総会が多いため、数値が変化しやすいタイミングといえます。3月期決算企業が株主総会を開く6月や中間配当を公表する10~11月も数値が積みあがっていく時期です。
このように日経配当指数は年単位、すなわち「この年の日経平均採用銘柄から受け取る配当金」という観点で指数化して計算し続けるのです。先ほどの紙面掲載例で2018年、と示していたのも、日経配当指数が年次ベースであることを示しています。
配当金は1株につき30円とか100円とか、企業によってまちまちです。これをどう計算するのでしょう。ここで日経平均の算出方法を思い出してみましょう。単純に構成銘柄の株価を合計し、225で割り算してしまうと、株式分割や株式併合といったテクニカルな要因が株価指数の動きに影響し、相場動向を示すものさしとして適切ではなくなってしまいます。また数百円の株価の銘柄を除外して1株何万円、といった株価の銘柄を採用しただけで株価が上昇したら、株価指数は連続性がなくなってしまいます。そこで平均を求める割り算の考え方をベースに、分子にあたる株価は「みなし額面」で換算した合計値を使い、分母は除数を算出し、工夫しているのでした。
みなし額面、前にも出てきた言葉ですね。かつて各社の株券には1株当たりの金額が書かれていました。これが額面ですが、いまは額面制度がありません。ただ日経平均の算出ではこの額面が各株式にあるとみなして計算しています。各社の見た目の株価は百円単位もあれば万円単位もあります。額面を使って一定水準にそろえ、高い株価の銘柄を採用するだけで指数が上振れないように工夫しているのです。
額面制度の時代、それぞれの銘柄の株価は額面50円に換算して日経平均を算出していました。こうして算出している日経平均をもとにしたのが日経配当指数ですから、計算方法も同じように「みなし額面」と「除数」を使って計算しています。日経平均の水準に合わせて把握しやすいように、各社の配当金は確定した段階でみなし額面で換算し、配当権利落ち時点の除数で割って、その値を積み上げていきます。
新日鉄住金の例で考えてみましょう。日経平均を算出するうえで、新日鉄住金株の額面は500円です。実際に計算する場合、額面50円と比べると10倍です。実際の株価は10倍高い値段になっている、ととらえ、算出上はみなし額面で換算し、株価を10分の1にして求めます。このやり方を配当指数の算出でも踏襲します。
日経配当指数は1月から12月までの暦年でみています。3月期決算の新日鉄住金は2018年で考えると、18年3月に40円、18年9月に40円の配当となっています。日経配当指数の計算上、新日鉄住金分は18年での実施分(合計80円)を10分の1にして算出します。
日経平均は秋、定期の見直しの結果、銘柄を入れ替えることがあります。そのほか構成銘柄が上場廃止になれば臨時で入れ替えます。こうしたとき、日経配当指数を算出するうえではいつの時点で入れ替えるのか、が重要なポイントになります。
例えば除外する銘柄Aについて、配当を受け取る権利がなくなる状態(配当落ち日)に入れ替えなら、日経配当指数には組み入れられません。Aの配当を得る権利が残っていないからです。代わりに採用する銘柄Bの配当金の組み入れも配当落ち日をまたいでいるかどうかで決まってきます。落ち日に日経平均の銘柄として採用していれば、そのまま指数に積み上げられます。
算出と公表を始めたのは2010年4月9日で、ちょうど10年目を迎えます。データは1998年まで遡って算出しています。リーマン・ショックの影響で企業が配当をいったん抑制した後、日経配当指数は上昇し続け、2017年は373円02銭でした。18年の最終値は19年4月1日に446円32銭と決まり、6年連続で過去最高でした。19年の数値は1月の第2営業日から算出が始まっています。日経平均の構成銘柄で1月以降、配当を確定した事例が出るまではゼロのままです。
配当指数の最終値を予想して売買する金融商品があります。「日経平均・配当指数先物」で、投資家が各社の配当は増えるとみれば数値が上昇し、減ると考えれば下落します。多くは機関投資家が利用しています。
日経配当指数には最近、新しい仲間ができました。19年3月から算出と公表を始めた「日経平均・予想配当指数」です。予想、が入っているのが特徴ですね。
これまで説明してきた日経配当指数は「配当金が確定した段階」のたびに積み上げて算出してきました。日経予想配当指数の算出手順は同じで、反映のタイミングが前倒しとなり、「配当落ち日段階」となります。予想の名前の通り、日経予想を配当落ち日に組み込んで計算し、早い段階で予想ベースの日経配当指数を知りたい、というニーズにこたえることを目的にしています。
配当落ち日時点の予想と比べて、実際に確定した配当額が増えたり減ったりしたら、日経予想配当指数は確定と予想の差を修正します。最終的に、日経予想配当指数と日経配当指数は一致します。
日経配当指数、日経予想配当指数とも、最新の数値はウェブサイト「日経平均プロフィル」からたどることができます。トップ画面の「指数一覧」から、日経平均・関連指数のうち配当指数をみると最新の数値や算出方法など詳細を確認できます。
(2019年3月29日付日経電子版掲載、4月12日更新)