株式投資の超キホン「日経平均」を知ろう!(7)
2018年の株式相場は波乱のうちに幕を閉じました。19年は亥年です。イノシシは「猪突猛進」というように、猛烈に突き進むイメージがありますが、過去の「亥年相場」はどう動いたのでしょうか。新しい年を展望するためにも、今回は長い歴史を誇る日経平均株価で振り返ってみましょう。
相場の世界では干支にちなんだ格言があります。卯年は「跳ねる」と言いますし、「辰巳天井」「申酉騒ぐ」とも言われます。亥年の相場格言は「固まる」です。小幅な値動きにとどまる、という解釈が一般的ですが、干支別の日経平均をみると、相場が上がりやすい年と言えそうです。
日経平均は算出開始以来、これまで亥年が5回巡ってきました。1959年(昭和34年)、71年(昭和46年)、83年(昭和58年)、95年(平成7年)、そして2007年(平成19年)です。亥年の出来事を振り返ってみると1971年にはニクソン・ショックがあり、95年には阪神大震災、2007年には翌年のリーマン・ショックにつながるサブプライムローン問題の表面化などが起きています。
歴史的な出来事が多い亥年ですが、株式相場を見ると総じて堅調と言っていいでしょう。日経平均は07年を除けば各年とも終値は前年末から上昇して終わっています。上昇を勝ち、下落を負けとすると「4勝1敗」で、実に勝率は80%です。干支別では83%で同率首位の「申」「酉」にこそわずかに及びませんが、堂々3位の好成績です(ちなみに18年=戌年は現在の水準が続き17年を下回る、と想定すると4勝2敗となります)。
過去の実績値で見た「平均騰落率」を干支別に見ても、亥年は上昇率の上位に入っています。トップは辰年の28.0%で、子年(23.8%)、卯年(16.4%)と続き、僅差で亥年(16.2%)が4位でした。
日経平均にとって最初の亥年は1959年で、伊勢湾台風に見舞われましたが、「岩戸景気」と呼ばれる高度経済成長のさなかにありました。日経平均の年末終値は874円88銭で、この年は31.3%の上昇率でした。当時の日本経済新聞紙上でも「一日一億七、八千万株という大商いが続き、また業者の決算内容も例年にない好調を示している」という記述が見られます。
次の亥年は71年です。8月に当時のニクソン米大統領は金とドルの交換停止を発表し、発表翌日の日経平均は1日としては現在までで歴代10位の下落率(7.7%)を記録しました。日本経済への影響を懸念した動きが広がったのです。同じ年の12月に1ドル=360円の固定相場だった円相場は308円まで切り上がりましたが、金融緩和を背景に金融機関や事業会社の資金が年末にかけて市場に流れ、大納会終値は2713円74銭となり、70年末から36.6%の上昇率でした。
続く亥年は東京ディズニーランドが開園し、任天堂が「ファミリーコンピュータ」を発売した83年です。年間を通じて一本調子で上昇し、大納会終値は高値引けとなる9893円82銭でした。82年末から23.4%上昇し、堅調だった80年代を象徴する年になっています。企業業績への期待や世界的な株高基調により、外国人投資家が日本株を買っていたのです。この翌年、日経平均は初の1万円台乗せとなります。
95年は阪神大震災や地下鉄サリン事件など歴史に残る出来事が多い年でした。外国為替市場ではこの年の4月に円が一時、ドルに対し79円台をつける場面があるなど、急激に円高が進みました。合わせて株価は軟調でしたが、日米当局の協調介入で円高に歯止めがかかると、株価は一転、上昇基調になり、年間ではかろうじて上昇となりました。この年の日経平均の推移をグラフで見ると、Vの字を描いています。年末終値は1万9868円15銭で、年間の上昇率は0.7%でした。
そして一番最近の亥年は2007年で、相場は下落しました。このころになると米国だけでなく中国の株式相場が世界に影響を及ぼすようになっており、この年の2月には中国株下落による世界同時株安が起きました。米国でサブプライムローンの焦げ付きに端を発し、関連金融商品が金融機関の経営に及ぼす懸念が広がったのもこの年です。不安は払拭せず、大納会の終値は1万5307円78銭にとどまりました。円高基調もあって年間の下落率は11.1%でした。世界的な金融不安は翌年の米リーマン・ブラザーズの経営破綻、09年3月の日経平均のバブル後最安値(7054円98銭)につながっていきます。
国内政治の世界では亥年は「4年に1度の統一地方選」「3年に1度の参院選」が重なる年で、自民党が苦戦する傾向にあると言われています。これは地方選に力を注ぐ一方、参院選に手が回らないのが一因とみられています。2019年も選挙の年ですが、安倍晋三首相は消費増税を予定通り実施する方針です。景気への影響を軽減するため、キャッシュレス決済でのポイント還元策なども打ち出しています。
19年、日本では5月1日には皇太子さまが新天皇に即位します。この日は祝日となり、株式市場は大型連休期間中、ずっと休場となります。土日を含めた10連休の間、相場に大きく影響を及ぼす動きがあれば、連休明けは大きく変動しかねません。米中貿易摩擦や英国と欧州連合(EU)の関係など世界は刻々と動いています。元号が変わり、いやがおうにも変化の年となる19年、干支別に見た日経平均の過去の経験則が活きるのか、いつになく注目度が高まっていると言えるでしょう。
(2018年12月28日付日経電子版掲載)