株式投資の超キホン「日経平均」を知ろう!(11)
日経平均株価にとって令和は初日に335円安で始まり、6営業日続落と波乱の幕開けでした。4月の日経平均が月間で約5%上昇した堅調ぶりとは打って変わったきっかけはトランプ米大統領のつぶやきにあります。
日本の10連休のさなか、トランプ大統領はツイッターに「中国の協議は続いているが、あまりに遅すぎる」と唐突に投稿しました。そして2000億ドル(約22兆円)分の中国製品に課す関税を10%から25%に引き上げる、と表明したのです。事態打開への期待感が4月の株式相場を支えただけに、10連休明けの日本株市場には動揺が広がりました。
現在の株式市場が注目するテーマは米中貿易摩擦の行方です。中国国内での設備投資はすでに減速し、影響は世界的に広がっています。日本企業の2019年度の業績見通しも慎重姿勢が目立ち、5月の日経平均は4月末に比べ1657円(7.4%)安でした。ただ目を凝らすと底堅い値動きの銘柄があります。海外の動向に左右されず、国内の需要をとらえて稼ぐタイプの銘柄はその代表例です。
■「稼ぐ場所」に注目
稼ぐ場所が国内中心の銘柄は今どんな値動きをしているのか、海外中心の外需株は今が底値なのか――。日経平均の構成銘柄を「稼ぐ場所」に着目してピックアップした新しい株価指数が登場したのを皆さんはご存じですか。
それが4月から算出・公表を始めた「日経平均内需株50指数」と「日経平均外需株50指数」です。日経平均の構成銘柄について海外売上高に注目し、その比率の低い順に50銘柄を日経内需株50に、高い順に50銘柄を日経外需株50に選んでいます。
企業は海外売上高比率が10%以上なら、有価証券報告書で海外売上高を開示しています。一方、海外の売り上げが10%未満なら開示しなくてもよいので、実際には開示の内容をもとに、日経平均の構成銘柄を独自に分類しています。
具体的には海外売上高比率を5%刻みで分類します。例えば海外売上高比率を開示していない企業、開示していても比率が10%未満なら一律、比率は「5%」とみなします。13%台なら「10%」、17%台は「15%」と、原則5%の刻みで一の位を切り捨てて分けていきます。最新の18年の選定では海外売上高比率が低い「5%」に54社ありました。このように2つの新指数の構成銘柄選びで同じ比率のものがいくつかある場合は、流動性(銘柄を選定する10月までの1年間の平均売買代金)の高い銘柄を優先して構成銘柄に組み入れ50社に絞っています。
■海外展開、業種問わず
これまで「内需株なら食品や通信」「外需株の代表は電気機器や自動車」といった具合に業種のイメージで語ることが多かったと思います。しかし今では業種を問わず、企業買収を含めてグローバル展開を進める企業が増えています。
5月末時点での2つの新指数の構成銘柄を見ると、日経平均の「食品」11社のうち、日経内需株50に入ったのは明治ホールディングスと日本ハムのわずか2社です。むしろ日本たばこ産業(JT)は日経外需株50の採用銘柄です。「通信」でもソフトバンクグループ、NTTなどはやはり日経内需株50に入っていません。メガバンクも同様です。
グローバル化が進む様子は、日経外需株50に組み入れられる銘柄で、海外売上高比率が最も低い数値の推移を見ると分かります。新指数は2001年までデータを遡れます。01年時点では30%台でも外需株50に入ることができましたが、今では最低ラインが60%に高まっています。
19年4~5月の相場について物色動向の変化を2つの新指数は分かりやすく物語っています。3月末を基準に、日経内需株50と日経外需株50、日経平均の値動きを比べると4月は外需株が好調で、日経平均を上回る推移でした。貿易を巡る米中対立は事態打開に向かう、との楽観が広がったためで、反対に内需株は下落基調でした。
■外需株に警戒広がる
それが5月に入ると外需株は急降下しています。トランプ大統領のつぶやきが契機となり、外需株には先行きを警戒する売りが広がった、との見方を裏付ける値動きと言えるでしょう。一方、日経内需株50は底堅い動きです。4月末を基準に3つの指数を比べると、この1カ月間は内需株が日経平均を上回って推移しています。
現在は1日1回終値を算出し、最新の数値は日本経済新聞社による指数の公式サイト「日経平均プロフィル」で確認できます。サイトではそれぞれの指数の1週間や1カ月、1年といった値動きをチャートで把握できるほか、日経内需株50、日経外需株50の構成銘柄も掲載しています。
(2019年6月6日付日経電子版掲載)