2005年12月8日(木)。総合人材サービス事業などを手がけるジェイコム(現・ライク)は東証マザーズ市場に新規上場した。同社株は買い気配でスタートしたが、大量の売り注文が出た。みずほ証券の担当者が顧客からの注文を受け「61万円で1株の売り」とすべきところを「1円で61万株の売り」と誤って入力した。発行済み株式数の40倍強に相当する大量の売り注文を受け、同社の株価は9時34分に値幅制限の下限いっぱいまで急落。誤発注に気づいた投資家の買いが膨らみ、9時43分には値幅制限の上限まで急騰した。
午後には「誤発注した証券会社は多額の損失を被る」との読みから証券各社の株式や系列に証券会社を持つ銀行株に売りが膨らみ、東京株式市場では日経平均株価が急落した。終値は前日比301円安の1万5183円と下げ幅の大きさは同年で3番目だった。上場後の記者会見で自社株式の誤発注が日経平均を下げる引き金となった点を問われたジェイコム社長は「証券会社1社のミスで市場全体の下げにつながったのは大変遺憾」と述べた。
9日(金)は午前中こそ個人投資家などから誤発注問題を嫌気した売りが広がる場面もあったが、売り一巡後は景気回復期待から買いが優勢となった。前日に株価が下落した金融関連株や鉄鋼株が買い戻され、みずほ証券を傘下に抱えるみずほフィナンシャルグループ株も反発。東京証券取引所第1部の売買代金は4兆円を超えた。前例のない大量の誤発注が皮肉なことに株式の売買を活性化させた。
みずほ証券は2006年3月期決算でジェイコム株の誤発注に伴う400億円強の特別損失を計上。東証のシステム不備で損失が拡大したとして損害賠償を求めて提訴した。誤発注から10年近くが経過した2015年9月、東証に約107億円の支払いを命じた東京高裁判決が確定した。誤発注が起きたことをきっかけに東証はシステムを刷新し、証券各社も値段や数量の面で不自然な注文を出せないように社内のチェック体制を強化するに至った。
※日経平均プロフィルの「日次サマリー」では、04年9月末以降の日経平均の日中の値動きを振り返ることができます。日経平均の「上昇・下落記録」もご覧いただけます。
(2017年12月29日更新)