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ダブルインバ指数、個人の利用拡大 カブコム河合氏

 日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの主要な株価指数には、投資家の多様な投資戦略ニーズに応じた関連指数が存在する。日経平均関連では日経平均の2倍の値動きになる日経平均レバレッジ・インデックスやマイナス1倍の値動きになる日経平均インバース・インデックス、マイナス2倍の値動きになる日経平均ダブルインバース・インデックスなどがあり、連動した上場投資信託(ETF)(指数用語解説)を売買できる。個人投資家の動向に詳しいカブドットコム証券の河合達憲・投資ストラテジストに指数の見方と活用法を聞いた。

■銘柄コードで質問20170512_photo1.jpg

――日経レバレッジ指数などに連動したETFの最近の人気はいかがですか。

 「個人投資家向けにイベントやセミナーを頻繁に開いているが、レバレッジ指数やインバース指数(指数用語解説)に連動したETFは参加者に浸透している。『河合さん、1357(日経ダブルインバースETF)はどうですか』といった具合に銘柄コードで質問する参加者もいる。人気がある個別銘柄をコードで呼ぶ投資家が多いのと同様、ETFの認知度が高まっている証拠だ。(2012年末に)アベノミクスが始まったころは各指数の仕組みを説明していたのとは様変わりだ」

 「14年にダブルインバース指数が登場したことで商品ラインアップとして打ち出しやすくなった。相場の見通しは、強気、弱気、中立の3つに大きく分類されるが、実際の投資家の心理は、かなり強気、やや強気、中立、やや弱気、かなり弱気という具合に分かれており、これらすべてに対応した商品が必要。ダブルインバースETFは『かなり弱気』な投資家ニーズを埋めた。ただ日経レバもダブルインバースも値上がりと値下がりを狙った商品であり、長期投資に対応したETFではないことには個人投資家は注意が必要だろう」

■個別株投資のリスクヘッジ

――個人投資家がダブルインバースETFに投資する狙いはなんでしょう。

 「リスクヘッジの効果が大きいからだ。例えば、株主優待制度や配当額の大きさを理由に購入した企業の株式を売りたくないが、相場見通しがかなり弱気な個人投資家が個別銘柄を売る代わりにダブルインバースETFを購入するパターンだ。予想通り株式市場全体が低迷しても損失を抑えることができる。自分の経験則でいうと個別銘柄の値動きは日経平均のおよそ2倍で、ダブルインバース指数はリスクヘッジに適している。最近は『ダブルインバをどのくらい買ったら、個別銘柄値下がりのリスクヘッジになるか』といったより高度な質問を個人投資家から受ける機会が増えている」

 「一方、日経平均の変動のマイナス1倍の動きとなるインバース指数に連動したETFは昨年末から売買高が伸びたが、最近の人気にはやや陰りが見える。複数のETFを購入するより、ダブルインバースETFの購入口数を調整するほうが手間を省けるのも理由だろう」

20170512_fig1.jpg■日銀ETF購入の功罪

――日経レバレッジ指数に連動したETF(日経レバ)の売買高の13週移動平均をみると16年前半以降は減少しています。

 「日経レバの売買高の13週移動平均のグラフを見てもわかるように、16年11月の米大統領選挙などの大きなイベントがあった時を除けば趨勢として減少傾向にある。17年に入ってからの日経平均はボックス圏で推移し、相場上昇への期待値が下がっている」

 「日銀による日経平均などのETF購入の影響もありそうだ。日銀が相場を買い支えているという『官製相場』で株価が下がるべき時に下がらなくなり、(株安時に購入してきた)日経レバに見切りをつけた投資家もいるのかもしれない。一方で日銀が市場に参加することでETFの認知度は大きく向上し、これまで関心がなかった個人投資家まで市場の裾野を広げたプラスの側面もある」

(2017年5月12日更新)