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米国投資、ETFで身近に ウィズダムツリー渡辺氏

 米国景気の先行きに明るさが広がり、米国株式市場は過去最高水準で推移している。しかし、実際に米国株を購入することには二の足を踏む投資家も少なくないだろう。米国の投資事情に詳しいウィズダムツリー・ジャパン(東京・千代田)の渡辺雅史ETFストラテジストに、米国株への投資方法と注意すべきポイントを聞いた。

■「母国バイアス」で機会損失20160812_photo1.jpg

――海外の株式や債券に投資する利点はなんでしょう。

 「万国共通の傾向として投資家には『ホームカントリー・バイアス』がかかりやすい。日本人投資家の金融資産は日本株など自国に偏りがちだ。日本企業が海外に進出し、日本市場に外国企業が参入するのが当たり前の時代。海外の市場や企業に投資しないのは機会損失だ。海外に目を転じることでリスクを分散できる。海外に投資できる環境にあるのならチャレンジすべきだろう」

 「海外の金融商品に投資する際の障害になっている2つのコストがある。1つ目は(個別企業などの)情報を取得するコストで、2つ目は海外株式を売買するための口座を開くといった取引コストだ。いずれも国内に投資するよりお金がかかる。これらを同時に解決するのがインデックス(指数)に連動した上場投資信託(ETF)(指数用語解説)だ。例えば、アップル1社だけの株式を購入するリスクは大きいし、投資信託を購入するにはまとまったお金がいる。ETFなら個人でも数千円単位から投資できる。ネット証券各社で口座を開けば、ETFも国内同様に手数料が安くなっている」

■「配当」と「債券」に注目

――米国の株式市場では7月以降、ダウ工業株30種平均が1万8500ドルを超え過去最高値を更新しました。どのような指数に注目していますか。

 「国内で日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)が注目されるのと同様、米国株式市場全体の動向を把握し、他国と比較するにはダウとS&P500種株価指数を見ていればいい。さらに独自の基準で選んだ銘柄で市場連動(ベータ)より賢く(スマート)運用するスマートベータ指数に注目している。配当や利益水準、自己資本利益率(ROE)(指数用語解説)の高さといった『利益の質』などにテーマを絞った指数だ。米国でも金利は低いので、配当利回りの高い株が注目されている。配当利回りの高い企業を集めた指数や、配当額で加重した銘柄群で構成する指数と連動するETFが存在する」

20160812_fig1.png 「債券指数も重要だ。債券市場全体の動向を確認するには金利を見るのも手だが、(指数と連動した)ETFの値動きを観察する方法もある。例えば、米国債と低格付け債(ハイイールド債)の市場の動きは異なる。債券利回りが低下すると、ハイイールド債を買っていた投資家が株式市場にも入ってくる。債券投資家の傾向としては定期収入がほしいので高配当株のETFの売れ行きが好調になってくる。債券にも着目することで、株式市場をみているだけではわからないお金の流れを把握できる」

■指数のルールとリスクを確認

――米国のETFを評価するポイントを教えてください。

 「まずは明確なルールが確立されていること。さらに設定したルールにのっとってきちんと企業を選び、入れ替えているのかを確認したい。ETFはルールと構成銘柄すべてを公開している。投資したい銘柄がちゃんと含まれているかをあらかじめ見ておきたい。次に上場してからの現在までの値動きをよく見たい。例えば、スマートベータ型ETFであっても、値動きが株式市場全体と大きく異なるのはおかしい」

――為替の変動リスクはやはり気になります。

 「海外の株式を買う際には為替リスクが当然存在する。アベノミクス以前は米国の投資家には為替リスクを避けるヘッジ手法を活用する習慣がなかった。日本株は円安と株高が同時に起こりやすい。日本株を買って株価が上昇しても、円安になるとドルでみた価値が下がってしまう。ウイズダムツリーの日本株ETFが米国で人気を集めたのは為替ヘッジ型だったことが大きい。一方、日本からみて為替をヘッジした海外ETFは少ない。ETFの良いところとして、取引所に上場しているので(為替水準を見ながら)指し値で売ることはできる。外国為替証拠金取引(FX)で為替リスクをヘッジし、海外のETFを購入する個人投資家もいる」

20160812_fig2.png■ETFと相性いいロボ・アドバイザー

――米国ではロボ・アドバイザーが注目されています。

 「米国には投資アドバイザーが個人資産を預かって運用する文化がある。アドバイザーが手がけてきたアセット・アロケーション(資産配分)業務を代替できるのではないか、というのがロボ・アドバイザーの発想。投資家が(システム上で)いくつかの質問に答えていくと、最適なアロケーションを示し、申し込むとそのまま運用してくれる。質問内容は年齢、資産内容、使い道などロボ・アドバイザーによって千差万別だ。ロボ・アドバイザーはコストを減らすのが目的だから、(取引コストの安い)ETFとは相性がいい。米国ですら市場はまださほど大きくはないが、扱っているベンチャーは急速に成長している」

(2016年8月12日更新)