2月13日は「NISA(少額投資非課税制度)の日」。NISA口座を通じた株式や投資信託の買い付けは着実に増えている。1月からは税制面で一段と優遇される個人型確定拠出年金(DC)の「iDeCo(イデコ)」が始まるなど、これまで投資に縁がなかった個人が株式投資を始める環境が一層整いつつある。個人の株式投資に詳しいSBI証券の藤本誠之シニアマーケットアナリストに、初心者が取り組みやすい株式投資について聞いた。
■個人の株式投資に合理性
――主婦や公務員などほぼすべての現役世代が個人型DCの対象になりました。個人投資家の株式投資に対する関心は足元で高まっているのでしょうか。
「個人型DCに関する書籍はよく売れているようだ。SBI証券が1月に開催したiDeCoのセミナーは30~40歳代の参加者を中心に盛況だった。中長期で税制面でのメリットがあるなどプラス面が大きいことは理解され始めている」
「金融資産が円預金だけでよいというのは、金利が高く円の価値が高まっていた高度成長期の話。日本の成長力が弱まり公的年金などに頼りにくくなることが明白な昨今の状況で、金融資産のある個人が投資をしないというのはいかがかと思う。投資対象が日本企業であっても、例えば、コマツやキヤノンは売り上げの多くを海外事業が占める。内需型の企業でも上場企業には成長余地がある。円と株式のどちらに投資するかと考えれば、個人は株式市場にも参入するのが合理的ではないか」
――最初に手がけるべきは投資信託でしょうか。
「運用担当者の腕で市場平均を上回ることを目指すアクティブ型の投信は(投資初心者には)薦められない。どの投信が良いのか判断できないからだ。初心者は株価指数に連動して運用するインデックス型がお薦めだ。日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などに連動した上場投資信託(ETF)(指数用語解説)が人気だが、今ならJPX日経インデックス400が良い。ウエートが大きい銘柄について構成銘柄全体に対する選定基準日時点のウエートが1.5%になるように調整し、特定銘柄の株価の影響を受けにくい。最近では『日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信』が個人投資家からの人気が高かった。短期的なリターンを狙う人には良いだろうが、数カ月間も投資し続けるETFには向かない」
■東証マザーズ指数に注目
――中小型株への投資はいかがでしょう。
「東証マザーズ指数にいつも着目している。最近の値は1000近くで推移しているが、2016年4月につけた高値(1226)を更新して年内に1300くらいまで上昇することはありうるとみている。これから日本経済を引っ張ってくれるのは成長株・新興株しかない。円安が一段落すると為替相場に影響を受けにくいマザーズ上場の内需関連の企業が注目されるだろう。証券アナリストが担当していないような銘柄だ。ただ、マザーズ指数に連動したETFは(ファンド運用の難しさから)登場していない」
「3月に算出が始まるJPX日経中小型株指数に連動したETFに注目しているが、採用銘柄200社にはかなり古い会社も含まれ、新興市場のイメージが薄い。単に中小型株というだけでなく、設立20年以上の銘柄を除くといった条件を設けたほうがよかった」
「インデックス投資も良いが、20代~30代の若い投資家なら個別株にも挑戦してほしい。証券各社の(ETFの)信託報酬の比較ばかりしているブログなどを読むとちょっとがっかりする。若い人ほど新聞や投資に関する本を読んで勉強し、インデックス投資を上回るパフォーマンスを出せる銘柄を探してほしい」
■過去のパターンから学ぶ
――個人投資家は情報を集める中でどんな指標に着目すればよいのでしょう。
「例えば、米雇用統計の発表は(市場関係者にとって)『お祭り』だが、景気指標としてはあまり意味がないと感じている。米国のような労働人口が巨大な国で、毎月の(予測値と比較した)数万人程度の雇用者の増減だけに注目するなんてナンセンスだ。ただ、雇用統計を世界中の投資家が注目しているという事実を知ることには意味がある。相場は同じことを繰り返す。将来、同じことが起きれば同じように反応するパターンを覚えたい。雇用統計のような指標の結果によって市場がどう反応するかをシミュレーションし、次に同様のニュースが出たらどう動くかを日ごろから考えたい」
「一方、英国の欧州連合(EU)からの離脱のように経験則が通じないニュースがあると株式市場は大きく反応する。東京は欧米で週末に起きたニュースの洗礼を世界で最初に受ける主要市場だから、海外で大きな選挙などがある週末には投資家はポジション(持ち高)を落としておくべきだろう」
(2017年2月10日更新)