なるほど日経平均70周年(4)
日経平均株価は現在、すでに30年半ぶりの高値まで回復しました。ただ1989年12月29日につけた史上最高値(3万8915円87銭)まではまだかなり遠い距離があります。ところが海外勢は日経平均について違った見方をしているかもしれません。実はドル建ての日経平均はすでに史上最高値の水準に達しているのです。今回はドルベースで算出した日経平均について解説します。
円ベースの日経平均をその日の為替レートで割って算出するのがドル建ての日経平均です。円ベースは日本経済新聞社が午後3時の終値を公表していますが、ドル建ては少々異なります。為替は常に変動しているため、どの時点のレートを使うかによって数値が微妙に異なるのです。ここでは日銀が公表する「中心相場」を使って話を進めます。
■ 31年ぶりの記録更新
データを遡れるのは1979年1月4日までで、この時のドル建て日経平均は30.68ドルでした(円建ては6041円57銭、対ドルの円相場は1ドル=196円90銭)。しばらく50ドル未満の水準で推移しますが、85年に50ドルを突破すると、ドル建て日経平均は86年に100ドル台、88年に200ドル台に乗せ、騰勢を強めました。
そして89年12月28日には当時の最高値となる273.59ドルをつけ、この値が先月更新するまでの史上最高値でした。
その後は円建ての低迷と同様、大幅に調整しました。イラクがクウェートを侵攻した翌日の90年8月3日には円建ての日経平均が3万円を割り、ドル建ては200ドルを割りました。99年から2000年にはいったん復調しますが、りそなホールディングスの経営問題が取り沙汰された時期の03年4月28日に63.40ドルまで下げ、バブル崩壊後の最安値になっています。
円建てと似た動きは現在も続いています。この1年、新型コロナウイルスの世界的なまん延で一時は大きく調整した日経平均ですが、その後は事態収束への期待や主要国の大規模な金融緩和などを手掛かりに回復の一途をたどりました。そしてドル建ては21年1月13日に274.49ドルまで上昇し、約31年ぶりに高値を更新したのです。この勢いは続き、現時点では1月21日の277.76ドルが史上最高値となっています。
■ 円高・ドル安の追い風
背景には円高・ドル安の進行があります。20年の円建て日経平均の終値は19年の終値比で16.01%高でしたが、ドル建ては22.34%高と大きく上回っています。対ドルの円相場を見ると19年末の109円台が20年末には103円台まで円高・ドル安が進行しており、この影響が見て取れます。
先ほど、ドル建ての最高値が従来は1989年12月28日だったと書きましたが、円建てでは1日ずれて、同年12月29日です。この日、日経平均は円建てで38円93銭高と小幅に上昇しましたが、為替は1ドル=142円10銭から143円45銭まで円安・ドル高が進みました。為替要因が「1日のずれ」をもたらしたのです。
日本株に投資する海外投資家の多くはドルに換算して運用を管理しています。ドル建て日経平均の動きは国内の株式市場で大きな存在感を持つ海外投資家の運用状況や動向をはかる材料といえるでしょう。投資主体別の投資動向をみると、20年10月以降、海外投資家は日本株を買い越していますが、日本株の復調を意識して買いを入れている可能性がありそうです。一方で高値をつけた達成感から、利益確定の売りが出やすい局面ともいえそうです。
■ ドル建て日経平均先物、海外でも上場
現物株を売買する投資家にとって、株価指数の先物を取引できることは損失を抱えるリスクを回避するために重要となります。その点、日経平均は円建てに加えて、ドル建てでも先物がシンガポール取引所(SGX)や米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場しています。国際的にも存在感のある日本の株価指数として認知されているのです。
日経の指数公式サイト「日経平均プロフィル」では毎日の外貨建て日経平均を公表しています。サイトのトップ画面にある「日次サマリー」をクリックすると「通貨建て日経平均」の項目でドル建て、ユーロ建てを確認できます。
(2021年2月6日付日経電子版掲載)